去る2019年10月5日(土)夜、秋田市大町サンパティオにあるJIKODOにて、第3回となる「MINASEナイト ~Minese(マイネーゼ)たちの集い~」が開催されました。
この会は、2018年3月より秋田県唯一の正規販売店となったJIKODO(ジコードウ)が、同じ秋田県内で作られるMINASE(ミナセ)の素晴らしさを単なる販売店としてではなく、作り手の方々との交流を通じてより深めていく、ということをテーマに半年に1回開催しているものです。
ちなみに第1回は、2018年10月に製造責任者である、時計製造部の高橋 功一部長、ミナセの真骨頂ともいえる研磨の責任者高橋 稔課長をお招きし、ミナセの製作に関しての苦労話や今後ミナセの展開や展望についてなどをお二人に語っていただきました。(この時の模様は”JIKODO旧ブログ”にて)
印象に残っているのは、この両高橋さんの実直で誠実なお人柄。その人柄そのままに具現化されたのがミナセの腕時計なんだな、ということ。世界的に評価されているミナセの研磨技術ですが、この方々が手掛ける以上下手なものは出てこないと思いました。
そして第2回は半年後の2019年5月に開催されました。メカ好きにはたまらない時計のムーブメント(内部機械)の分解と組立ての実演を技術主任の星野 靖義さんに行っていただきました。
男性であれば少なからず何かしらのメカを分解したり、プラモデルなどを組み立てた経験があるはず。それを精密機械の代表である自動巻き腕時計のメカの分解組立となれば、大人の男性の目が少年の目のようにキラキラと輝いてしまうもの。
第2回MINASEナイトの模様はFacebook内にて一部実況中継致しました。(この時の模様は”こちら
”まで)
さて、若干前置きが長くなってしまいましたが第3回MINASEナイトはミナセとその妹的ブランド「タイム&ブーケ」の両デザイナーを招いてのトークショーとなりました。
普段はこのようにお客様の前でお話することはない、とおっしゃっていた「Vani Creates(ヴァニクリエイツ)」代表の山本 博邦さんとデザイナーの小笠原 利香さん。
お二人のおっとりとした落ち着いた雰囲気に、会が始まる前から参加者の方々が気軽に話しかけていたのが印象的でした。
ミナセのデザイナー山本さんは、前職で国産大手時計メーカーにおられ、誰もが一度は聞いたことのあるファッションブランドのデザインを手掛けていらっしゃった方。また、温度計やカメラ、ダストボックス(?)など幅広い分野での実績がおありの方です。
当日はもちろん私も初めてお目にかかった「ファイブウインドウズ」や「ホライゾン」の初期段階のイラストや、協和精工社の顧問や社長に当初提案したプロトタイプのデザイン画も披露していただきました。
私の印象に残ったことは、山本氏によると、他社や他ブランドであればデザイナーはただデザイン画だけ起こして、それ以降の製品化へ向けての詳細な部品の設計等はよりコストのかからない方法を取ってしまうことが一般的。ところが、ミナセに関しては部品一つ一つの設計も任され、他社では絶対マネできないような文字盤であり、インデックスを作り上げることができた。
これはともすれば、使い捨てのような流行りに乗ったデザインを短期間で作る必要のあるファッションブランドとは真逆に位置し、山本さんが本当はやりたいんだけれどその状況、環境が許してくれなかったことを具現化できるチャンスが、ようやくミナセを通じて訪れたんだなと感じられた。
正直、ミナセの時計のデザインは好き嫌いが分かれるとは思うが、製造を担当する方、そしてデザインを担当する方両方の話を伺うと、好き嫌いの次元ではなく純粋に、世界に誇れる技術と熱い想いを具現化したミナセという時計を愛おしく感じてしまうのは私だけではないのではないか。
まだまだ知らないミナセの世界があって、さらにさらに奥深い「何か」がこの時計にはありそうだ。
続いて奥さま、でもあるタイム&ブーケのデザイナー小笠原 利香氏のお話を伺いました。
「時の花束」・・・タイム&ブーケ。
バラやさくら、チューリップ、ひまわりなどの目を引くいわゆる「華のある」花ではなく、「すずらん=ミュゲ」、「ひなげし=コクリコ」、「フランネルフラワー=ネル」という一見おとなしめに見える花たち、だけどそこに凛として自立しさりげなく存在感を醸し出している、そんな花たち。実際に身につける方たちに寄り添って咲く、そんなイメージの花。
小笠原さんは、このブランドの話を聞いてすぐイメージが湧いてきて、頭の中にあったデザインを即CGに落とし込んだそうです。それがまたほぼ完成品と見紛うぐらいディテールに完成度が高く、微妙なデザインの変更はあったものの大方初期デザインのまま製品化されたそうです。
今回はデザイナーさんのお話、ということで女性参加率が50%。タイム&ブーケのオーナーさんも複数いらっしゃっていて熱心に聞かれている女性の姿が印象的でした。
どちらのブランドにも言えることですが、お二人のデザイナーさんのイメージを損なうことなく製品化できる技術力とお互いの信頼関係を強く感じさせていただきました。
デザイナーの仕事は華やかで、修正に次ぐ修正だったり、コストとの戦いだったり、デザイナーや若い人の感性と会社上層部の古い体質の対立構造が思い浮かんていたんですが・・・
確かに大手メーカーでは未だにありえる話かもしれませんが、山本さん、小笠原さんのお話を伺い、ミナセとタイム&ブーケに関しては、かなりお二人の存在感存在意義が大きく関わっていて、もはやライフワークと呼ぶにふさわしいレベルのお仕事をなさっているなぁと思わされました。
お二人のお話された時間以外は、参加した皆さま、用意した羽後ビールや、飛良泉の焼酎、鴇ワイン、ご近所にあり秋田の食材をおいしく料理されているルセットさんのオードブルなどを楽しみながらそれぞれに会話を楽しんでおられました。
(あ、ウイスキーにもちょっとこだわりまして、ミナセブランドの立ち上がりと近い2004年に復興したスコットランド・キャンベルタウンの「キルケラン」と同じく2004年からたった15年でもはや世界から注目を集める日本のクラフトウイスキーのさきがけ「イチローズモルト」を用意しました。)
時計もセイコー、シチズンといった巨大企業があっての協和精工のミナセ、ウイスキーもサントリー、ニッカ(アサヒビール傘下)という2大メーカーがあってのイチローズモルト。
生産数や売上ではかなうわけもないのでしょうが、そこに熱烈なファンがいて地元(イチローズモルトは埼玉の秩父)から愛され、誇りにもなっている・・・何か近いものを感じるんですよねミナセと。
(お酒やお料理の写真、撮り忘れました・・・スミマセン)
会の最後に参加者で記念撮影。
また次回につづく・・・
最後までお読みいただきありがとうございます。
毎回司会をお願いしている協和精工の営業 北澤さんとわたし